チップ、というシステムがあります。
サービスをしてくれた人に支払う「あれ」のことです。
日本人が外国へ赴いたときの、気になる習慣のひとつである「それ」。
南インドのケララ州を爆食目的で訪れるようになってから、チップというものについて少し考えるようになりました。
「チップとは」ということに関する一般的な説明としては、
- サービスをしてくれた人に対する心付け
- 日本ではすでに代金に含まれているため、チップを意識することがない
というところです。
だから、日本人はチップというシステムに馴染めないんだね…というお話なのですが、それとは異なる自分なりの解釈を書くことにします。
創意工夫→ドキドキ→報酬
チップというシステムは、まずサービスを提供する人にとっては、
- 自分なりのサービスの仕方を考えてみた(創意工夫)
- お客さんのウケはいいかなぁ(ドキドキ)
- ウケが良かった or 悪かった(評価)
- チップを受けとる(報酬)
というサイクルになります。
サービスマンが受け取ったチップは、そのまま新たな創意工夫へのモチベーションとなり、サービスを受ける人にとってもプラスに働くことになります。
ただし、上記のサイクルは「人間が何かを継続するモチベーションを維持する」ときに常に働いているサイクルであり、サービス業に限ったものではありません。
落合陽一さんの著作、『超AI時代の生存戦略・シンギュラリティに備える34のリスト』にて、「テンションが上がるロジック」について述べられている箇所があります。
(以下引用)
ここで大事なのは、「ドキドキして報酬がある」ということを多少なりとも私たちは少しは持っているはずだということだ。(中略)「○○を作ってみた、ドキドキする、売れるかな、大丈夫かな」と思って、うまくいくときと悪いときがあるというのは、極めてギャンブル的な仕事活動である。(中略)「ドキドキしてたまに報酬がある」。すべての仕事はこのロジックだ。
他のドキドキ事例
「創意工夫→ドキドキ→報酬」
このサイクルを「ドキドキ・サイクル」と呼ぶことにしましょう(←いいのか)。
ドキドキ・サイクルが機能するには、必ずしも「労働」や「金銭」が必要なわけではありません。大した人生経験を積んでいない筆者ですが、自分の経験に基づいた例を挙げてみます。
【事例1・チャンギ空港のトイレ】
ケララ爆食旅行記にて既出ですが、シンガポールのチャンギ国際空港のトイレには「利用者が清掃状態を評価するシステム」があります。
写真には入っていませんが、「私が清掃しています」みたいな感じで、清掃員の顔写真と名前が表示されています。
- 自分で清掃の仕方を改善する(創意工夫)
- どう評価されるかなぁ(ドキドキ)
- 「Excellent」をポチっと押す(自身の成果として評価されるという報酬)
【事例2・筆者の料理試作】
自分一人で完結する活動ですが、ここでもドキドキ・サイクルが働いています。
- 作り方をこういうふうに変える!(創意工夫)
- おいしくできるかなぁ(ドキドキ)
- ウマイ!(快感という名の報酬)
【事例3・ブログ】
- こうしたら記事が面白くなるんじゃないか(創意工夫)
- 読者のウケはどうかなぁ(ドキドキ)
- ウケた!(スター獲得、読者数増加などの報酬)
ドキドキ・サイクルは、人間がモチベーションを維持して何かを続けていくこと全般に必要なサイクルです。
チップというシステムは、このサイクルが適用されている一つの例に過ぎません。つまり、「創意工夫」にあたるものがサービスマンの改善活動、「報酬」にあたるものがお金。
その一方で、評価する側にとってもドキドキです。「報酬」の基準となる「評価」を下すことになるからです。
相場を訊かれるとドキドキしない
「チップの相場って、いくらですか?」と訊く人がいます。
筆者からすると、これって全然ドキドキしません。
なぜかというと、「チップの相場を訊いて、そのとおりの金額を払う」ということは、サービスマンに対して、「私はあなた個人を評価対象として認識していません。だから、誰に対しても一律同じ金額(=相場の金額)しか払いません」と言っているのと同じことだと思うからです。
- 創意工夫
- ドキドキ
- 報酬
チップの相場を訊いてしまう人というのは、
要するに、3の「報酬」だけあればいいんだろ?
と思ってしまっているのではないでしょうか。
報酬は評価に基づきます。
評価によって報酬が変わるからドキドキします。
つまり、チップの相場を訊いてしまう人には、「人間がモチベーションを保って何かを継続するためには何が必要か」という視点が欠けているのではないかと思います。
人生にはドキドキが必要だ
いや、ほんと面白くない。
「私」が考え出したものが、誰からも評価の対象とならず、横一線で見られてしまうって、ほんとに面白くないと思います。
「だから、チップを払うのを嫌がるなよな」という話ではありません。
みなさんの人生の中で、ドキドキ・サイクルが機能していると思える部分はどれだけありますか?仕事の中にありますか?趣味の中にありますか?
人生の中で「ドキドキ」を感じられる部分が今より増えれば、チップというシステムに対する見方も変わるかもしれません。
「ドキドキ」が多いほうが面白いですよね。
そして、人間とは「面白い」という理由だけで行動することができる生き物です。
お前の人生が面白くないのは、お前が面白くないからだ。
では、また書きます。
シンガポール・チャンギ国際空港についての記事はこちら。