「インド料理…つまりカレーですか?」と思ったことがある人は挙手!

それはカレーなのか問題

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「インド料理を自作してるんです」

「すごいですね…カレーですか?」

「…………..。」

インド料理を自作している方々、こんな会話を何度となくしてきたのではないでしょうか。

 

「それはカレーなのか」

返答に困る質問です。少なくとも私は困る(笑)。

なんだかどう答えてもこちらの思いというか意図するところが伝わりそうにない気がするんですよね。

 

そもそも「カレー」って何だ

カレー好きに語らせると徹夜になりそうなお題です。

インド料理研究家の渡辺玲さんが何度か著書などで触れておられることでもありますが、「スパイスを使用した汁気のある食べ物」という定義づけをされています。細かい部分で異論はあるかもしれませんが、インド料理を作っている人からは概ね同意を得られる定義ではないかと思います。

 

一方で、多くの日本人が「カレー」という言葉から連想するのは日本の「カレーライス」でしょう。「カレー」という言葉の捉え方に大きなズレがありそうです。

 

このズレを考慮に入れて冒頭の会話の行間を埋めると…

「インド料理を自作してるんです」

 (脳内)インド料理にもいろいろあるんだよ、カレーとかカレー以外のものとか。そういうのいろいろ作ってんのよ。

「すごいですね…カレーですか?」

 (脳内)インド料理っつったらカレーでしょ、スパイス使ってるし。

「…………….。」

 (脳内)スパイスを使った汁気のある食べ物という意味ではカレーも作ってるけど、この人の言ってる「カレー」ってたぶん日本のカレーライスのイメージ…。何と答えたら誤解を生まずに伝えられるのか!?

 

新しい知識を得るには既得の知識を使うんだけど

人間が新しい知識を得るときには、すでに習得している知識を利用するのが自然です。学校で教えられていることもそういう順序を意識して構成されているはずです。

 

ただ、外国の食文化を理解しようとすると、今までの人生で得てきたほとんどの知識が役に立たない、という状況に直面することが多いと思います。どの既得知識が有用なのかという選別をかなりシビアに迫られてしまう、とも言えます。

冒頭のやりとりでは、「カレーライス」という既得の知識で「インド料理」という新しい知識を得ようとしていることになります。共通項はスパイス使用&汁、でしょうか。アブナイ(笑)。

 
他の例、南インドの日常食サンバルの場合

「サンバルは日本の味噌汁的存在です」

「え?味噌汁の味がするんですか?」

これはサンバルという新知識を得るために、味噌汁の「味」という知識を用いようとする間違い。ここで用いるべきは味噌汁という料理の「位置付け(朝食の定番であるなど)」に関する知識です。

インド料理に馴染みのない人に対して「サンバルって○○のような味」という説明をすることはかなり難しいでしょうね…。

サンバルのレシピはこちら

necoturban.com

 

ズレがあること自体は悪くない

「カレー」という言葉の捉え方にズレがあること自体は悪いことではありません。そもそも「定義」とは絶対的な真理ではないからです。

 

「定義」とは(ウィキペディアを要約)
コミュニケーションを円滑に行うために、ある言葉の正確な意味や用法について人々の間で共通認識を抱くために行われる作業。定義が決められる理由は、複数の定義があると矛盾が生じるからである。

 

インド料理における定義→スパイスを使った汁気のある食べ物

多くの日本人にとっての定義→カレーライスのような香りがする汁気のある食べ物

 

インド料理には日本のカレーライスとは似ても似つかぬ香りの「カレー」も存在することを考えると、上記の定義付けの間にはかなりのズレがあり、このズレを持ったままコミュニケーションを取っていると会話にかなりの矛盾が生じるものと思われます。

 

目の前にある異質なソイツと向き合うということ

「カレー」という言葉自体は食べ物のカテゴリーを表す言葉として有用だと思います。

 

しかしながら、
日本人の多くが持っている「カレー」という既得の知識(定義付け)が外国の一料理を理解するうえで妨げとなりうること、外国の食文化を理解するときに利用できる既得の知識は多くはないということ、食文化を理解しようとすると体当たり(味覚や嗅覚など)で感覚的に覚えなければならない部分が多々あるのではないか、ということは一考に値すると思います。

 

既得の知識で新知識を得るのが人間にとっては自然でしょうから、体当たりで覚えるというのは結構なストレスになり得ます。

 

でも、時としてそうした方法も必要です。

 

「それはカレーなのか?」という問いにどう答えたところで、目の前にあるその料理の味が変わるわけではありませんし、理解が深まることもありません。

 

ただ、自分にとって異質なソイツと向き合うしかなかったりするのです。

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